生き生きした空間
谷川俊太郎(詩人)

大阪文学学校は、自前の空間を死守しているのが偉い。 具体的な場があれば、人はおのずから寄ってくる。 人の知恵と労力で場はいかようにも変容する、学校にも、芝居小屋にも、画廊にも、映画館にも、ビアホールにも、マーケットにも、寄席にも、公園にも。 見ず知らずの人間同士がつかのま共生する文字通りのライブ・ハウス、家庭とも会社ともちがう生き生きした家。 その家は目に見える場であるとともに、目に見えぬ魂のすみかだ。 文学を本と雑誌だけに閉じこめておくのはもったいない――文校の人と歴史と空間に、私はすっかりはげまされてしまった。

たにかわしゅんたろう・略歴
1952年、詩集『二十億光年の孤独』でデビュー。 1962年『月火水木金土日のうた』で第4回日本レコード大賞作詞賞、 1975年『マザー・グースのうた』で日本翻訳文化賞、1982年『日々の地図』で第34回 読売文学賞、 1993年『世間知ラズ』で第1回 萩原朔太郎賞、ほか受賞・著書多数。近刊は『私』『詩の本』『トロムソコラージュ』『ぼくはぼく』『写真』など。 詩の他に作詞、絵本、翻訳、映画脚本など幅広いジャンルで活動。

出会い
田辺聖子(作家)

文学学校を”経験”した私、いちばんすてきな経験は、〈出会い〉でした。 それまでの自分の成育歴や、人生の円周にいなかった個性、発想、知見、学殖……に出会い、快いショックを受けました。 〈出会い〉はまた、己のなかへ深く還ることでもあります。自分の裡にあるものと、めぐりあうこと。 出口を見つけられず不完全燃焼している自分の才能や、チャンスに出会うことでもあるのです。 人生の契機、たのしく拾いあつめて下さい。

たなべせいこ・略歴
1928(昭和3)年大阪市生まれ。樟蔭女子専門学校卒業後、大阪文学学校本科4期(56年5月)および研究科1期(57年11月)卒。 64年「感 傷 旅 行」で第50回芥川賞。その後、女流文学賞、吉川英治文学賞、菊池寛賞、泉鏡花文学賞など受賞。 00年文化功労者に選ばれる。04年5月『田辺聖子全集』(全24巻別巻1)集英社から刊行開始。