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●新入生「ハガキ一枚」課題は18名から届く●・・・◆作品発表・第3弾【昼間部・南田由芽<よしめ>さん/通教部・松﨑貴子さん】★提出まだの方、急いでください。《5月31日(土)締切》

今春の新入生全員(64名)に提出をもとめている〈課題ハガキ〉の既着分の中から、とりわけ印象的な作品を紹介する《第3弾》として2人の作品を取り上げます。今日までに、メール、郵送そして持参で18名から届いています。

すでに文校ブログに載せた《第1弾》は通教部・清野圭一さん<東京都>と昼間部・東加奈子さん<香川県>の作品(5/2文校ブログ)、《第2弾》は昼間部・信永真知子さん<広島県>と通教部・荒川光司さん<栃木県>の作品(5/10文校ブログ)でした。

提出作品は全て、「文校ニュース」に載せ、文校の多くの皆さんの眼に触れられるようにします。
課題のタイトル6つについては、5/2文校ブログを参照してください。
【小原】

        ☆       ☆ 
 
 私だけのもの
   南田由芽(昼・小説・大西クラス/奈良県天理市/39歳)

 ブロンズコレクター。他人(ひと)は僕をそう呼ぶ。
 全ての始まりは一五歳。中学生活の全てを捧げた弓道部、その最後の大会。そこで僕は生まれて初めてトロフィーを手にした。それは赤茶けたブロンズだった。これまで鳴きも飛びもせず、無言で地面を這い回っていた僕にとっては大きな成果のはずだ。それなのに、悔しかった。
 時は流れて、高校時代は朗読に青春を燃やした。NHK杯全国高校放送コンテストへの出場を目指して、毎日毎日、日が暮れるまで練習し続けた。けれど、悲しいことに希望する生徒全てが出場出来る訳じゃない。全国へ行くにはまず県大会を、県大会に出るためには学校内予選を勝ち抜かなければいけない。
――高校一年生、校内予選を勝ち抜いた。校内順位三位――
――高校二年生、校内予選を勝ち抜いた。校内順位三位――
――高校三年生、校内予選を勝ち抜いた。校内順位三位――
 銅に好かれているのか、金と銀に嫌われているのかは分からない。ただ、一番高い景色を見られずに高校生活を終えた、それだけはハッキリとしている。
 中学、高校とブロンズの景色は充分に眺めた。そろそろ上の景色も見てみたい。「結果よりも、経過が大事」と言うけれど、人生賭けて努力をすると決めたからには、目指すべきは笑える場所だ。
 そんな諦めの悪さと負けず嫌い、それと夢見がちの根性こそが僕の売り。
 これこそが僕だけのものだ。
                        
      ☆       ☆
 
 文学学校入学にあたって
   松﨑貴子(通・小説・美月クラス/島根県奥出雲町/26歳) 

 わたしにとって、図書室は逃げ場であった。小学生の頃、友達がもともといなかったのに、ひょんなことから全くいなくなってしまったことがあった。それから、わたしはいじられキャラという新しい人格を作り出した。クラスでは、ざっきーとよばれ、いじられたら笑っておもしろく返さなくてはならない。心は徐々にすりへっていった。気づいたら涙がでていたこともあった。そんなわたしにとって、図書室は逃げ場であった。クラスメイトは図書室までは追いかけてこない。何か好きな本があるわけではなかった。適当に見つけた本を開いて席に座り、読んでいるふりをしていただけだ。図書室がなかったら、わたしはあの日々を乗り越えることが出来なかったと思う。

 社会人になって、本を読むのが好きになった。本を開くと、今いる場所からどこへでも行ける気がする。瀬尾まいこ、高瀬隼子、村田沙耶香。彼女達の本にどれだけ助けられたかわからない。だが、まだわたしは、この趣味を語り合う友人を持っていない。文学学校で見つけられたらと思っている。