講師紹介冨上 芳秀とかみ よしひで

  • 担当科目:
    本科・ 専科
  • 担当部門:
    通信教育部
  • 担当クラス:
    詩・エッセイクラス
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Profileプロフィール

1948年生。七十歳になったので、その記念に〈詩的現代〉に「ジジイの覗き眼鏡」というエッセイを連載することにした。現代の詩の問題、過去の知られざる詩人の名詩に光を当てたりする。勝手気ままにジジイを自覚したバックパッカー冨上芳秀が詩の世界を旅する。また、好奇心の赴く所あらゆるジャンルを覗き見る試みである。今年は念願の評論集『竹中郁論』を上梓しようと思う。昨年末から多忙を極め、毎年新年に出していた詩集が出せなく、三月になるかもしれない。タイトルは『芭蕉の猿の面』。二〇一六年の詩集『蕪村との対話』とは全く別のスタイルである。詩集は『白豚の尻』など十三冊、他に評論集『安西冬衛』がある。文学学校のクラス修了生と季刊詩誌〈詩遊〉を編集発行している。

Messageメッセージ

最近、私が書いた詩を紹介しよう。
「生命線」
この線は生命線です。あなたの生命線はここで切れています。ここは何歳ぐらいでしょうか。あなたは何歳ですか。ああ、そうですか、長生きされましたね。もう死んでもいいでしょう。いやですよ。ここは今のあなたの歳ですよ。すると、もう少しで死ぬということですか。いやですか。いやに決まっています。なんとかなりませんか。寿命は決まっていますと驚く私の顔を見て、易者はニヤリと笑った。いかにも私が死の恐怖におびえたことが楽しくてならないという感じだった。ああ、手相なんか見てもらうのではなかった。表があれば裏もあるのですよ。どんな裏ですか。少しお金がかかります。いくらですか。あなたの持ち金の半分です。わかりました。すると易者は筆に水を付けて生命線を書いた。不思議なことに易者の書いた線は深い生命線となって私の掌に刻まれたのだ。だから、私は今も生きている。もう、飽きてきたので誰か生命線を消してくれる人はいないかと思うのだが、易者は死んでしまったようだ。いや誰もかれも死んでしまった。生きているのは私だけの世界であった。
(〈詩的現代〉二十七号)