呼吸する教室で
朝井まかて(作家)

 大阪文学学校が創立された一九五四年当時にくらべれば、文章を発表する機会、媒体は山とある。けれど古いビルの教室は呼吸している。互いの作品を読み込み、感じたことを伝え合うからだ。時には厳しい批評も飛び出すし、見当違いもある。おめでたい自信をぺしゃんこにされて吐く息、それでもまた次に挑もうと奮い立つ眼差し。現代では生々しく、濃過ぎる場かもしれない。
 けれど仲間と交わし合う感情がいかに人生を照らし、刺激してくれることか。小説も詩も生々しいものなのだ。この「合評」のスタイルが文校の筋骨であり、数多の創作の土壌となってきた。私も「わが母校」と呼び続けている。

あさい・まかて/略歴
1959(昭和34)年大阪府生まれ。06年4月から1年間、大阪文学学校夜間部に在籍、その後1年間休学。14年に『恋歌(れんか)』で第150回直木賞受賞。

持続力
玄 月(作家)

 先日ひさしぶりに文校を訪れた。私が通っていた九十年代半ばとほとんど変わっていないのに驚いた。四半世紀も経っているのに。
 この変わりのなさは、マンネリや進歩のなさではなく、類い希な持続力だと思う。創立六十五年。ここまでくれば、百年も見えてくるのではないか。
 私が文校に入ったのは二十九歳のとき。とにかく書きまくった。年に六作書いて授業に提出した。小説家になれる根拠はゼロなのに、よく続けられたものだ。無心に夢を追い続けた、というより、つらい現実からの必死の逃避だったのかもしれない。動機はなんだっていい。続けることができるのなら。

げん・げつ/略歴
1965(昭和40)年大阪市生まれ。94年10月から2年間、大阪文学学校夜間部に在籍。00年に「蔭の棲みか」で第122回芥川賞受賞。