小野十三郎賞 決定!

 第27回小野十三郎賞は、9月12日(金)の最終選考会において、下記のように決まりました。選考委員は、詩集部門(犬飼愛生、細見和之、四元康祐)、詩評論書部門(添田馨、葉山郁生、松本衆司)の六氏です。
 今回、選考対象としたのは、7月10日締め切りまでに全国各地から応募のあった詩集144冊、詩評論書5冊でした。

《第27回小野十三郎賞》

■詩集部門(賞金30万円)
『ノックがあった』(河出書房新社 刊) 岡本 啓/東京都


■詩評論書部門(賞金15万円ずつ)
『創世神話「塚本邦雄」初期歌集の精神風景』(ながらみ書房 刊) 江畑 實/大阪市
『暗闇の眼玉 鈴木六林男を巡る』(ふらんす堂 刊) 高橋 修宏/富山市

――授賞理由――
詩集部門●岡本啓『ノックがあった』 言葉の響きを注意深く拾いながら、そこに意味や含意を重ねることで、パンデミックや戦争や革命で揺さぶられるこの時代と自分の間に通路を切り開き、「ヒビだらけの日々を/響きでつかまえ愛する」詩集。日本語に特有な音(言)と訓(文)の分裂を束ね、歌と散文、私と公、叙情と叙事の統合を果たした、小野詩学「歌と逆に、歌」の最前線。
詩評論書部門●江畑實『創世神話「塚本邦雄」初期歌集の精神風景』 真の近代精神を確立するためには、短歌的精神を日本人の中から追放しなければならない、という短歌否定論に近代短歌は向き合わねばならなかった。つまり、近代的知性と短歌的抒情とがいかなる融合を遂げるかという課題である。その課題に対峙し、その方法論を求め、まさに求道者的彷徨をする初期の塚本邦雄の精神と創作の現実をあらゆる資料をもとに克明に辿った一冊として評価できる。●高橋修宏『暗闇の眼玉 鈴木六林男を巡る』 俳人・鈴木六林男の全体像を描いた。戦場俳句、社会性俳句にとどまらない審美性、幻想性、諧謔などを含め、現代詩と相わたる詩的イメージを媒介に俳人像を描いたことを評価した。

――第27回小野十三郎賞の最終候補――
■詩集部門(受付順)
(1)脳神経外科病棟505       清岳こう   思潮社
(2)一本足の少女         村岡由梨   七月堂
(3)失せもんめっけもん      服部誕    編集工房ノア
(4)プリンは置いといて      竹井紫乙   七月堂
(5)りかこのように水を切れ    樋口和博   空とぶキリン社
(6)ひとつの夜とひとつの朝    柴田三吉   ジャンクション・ハーベスト
(7)キアゲハの帰還        和田祐子   土曜美術社出版販売
(8)おはようジャック&ベティ   坂多瑩子   書肆子午線
(9)ノックがあった        岡本啓    河出書房新社
(10)真っ白の皿          金井裕美子  地湧社
(11)その言葉はゴーヤのように   佐川亜紀   土曜美術社出版販売
(12)アンヌたちの庭        北原千代   思潮社
■詩評論書部門(受付順)
(1)創世神話「塚本邦雄」      江畑實    ながらみ書房
(2)暗闇の眼玉 鈴木六林男を巡る 高橋修宏   ふらんす堂

 なお第27回小野賞授与式は、きたる10月5日(日)午後2時より行われる大阪文学学校の秋期・入学開講式のなかで実施されます。

[主催]一般社団法人大阪文学協会〈小野十三郎賞実行委員会〉
[共催]朝日新聞社
[後援]桃谷容子基金/澪標

過去の受賞者一覧
第1回受賞
小野十三郎賞
詩集『墓を数えた日』 瀧 克則(大阪府)
小野十三郎賞記念特別賞
詩誌『核』(北海道)/詩誌『三重詩人』(三重県)
第2回受賞
小野十三郎賞
詩集『言葉の河』 高橋 秀明(北海道)
第3回受賞
小野十三郎賞
詩集『夕方村』 八重洋一郎(沖縄県)
詩評論書『詩論の現在Ⅰ~Ⅲ』 北川 透(山口県)
第4回受賞
小野十三郎賞
詩集『陣場金次郎洋品店の夏』 甲田 四郎(東京都)
小野十三郎賞特別賞
詩評論書『マンデリシュターム読本』 中平 耀(神奈川県)
第5回受賞
小野十三郎賞
詩集『バース』 苗村 吉昭(滋賀県)
小野十三郎賞特別賞
詩評論書『戦後関西詩壇回想』 杉山 平一(兵庫県)
第6回受賞
小野十三郎賞
詩集『朝鮮鮒』 渋谷 卓男(神奈川県)
第7回受賞
小野十三郎賞
詩集『語族』 添田 馨(埼玉県)
第8回受賞
小野十三郎賞
詩集『学校』 たかとう匡子(兵庫県)
第9回受賞
小野十三郎賞
詩集『影たちの墓碑銘』 長津功三良(山口県)
詩集『宙家族』  中岡 淳一(大阪府)
小野十三郎賞特別賞
詩評論書『栗生楽泉園の詩人たち』 久保田穣(群馬県)
第10回受賞
小野十三郎賞
詩集『ババ、バサラ、サラバ』 小池 昌代(東京都)
詩集『ナナカマドの歌』 田中 郁子(岡山県)
小野十三郎賞記念特別賞
詩評論書『評伝 パウル・ツェラン』 関口 裕昭(愛知県)
第11回受賞
小野十三郎賞
該当作なし
小野十三郎賞特別奨励賞
詩集『象牙の塔の人々』 山口 春樹(大阪府)
詩集『野川』 岡島 弘子(東京都)
第12回受賞
小野十三郎賞
詩集『青天の向こうがわ』 三井喬子(石川県)
小野十三郎賞特別賞
詩評論書『山上の蜘蛛』 季村敏夫(兵庫県)
第13回受賞
小野十三郎賞
詩集『水源地』 谷元益男(宮崎県)
第14回受賞
小野十三郎賞
詩集『真心を差し出されてその包装を開いてゆく処』 宋敏鎬(群馬県)
第15回受賞
小野十三郎賞
詩集『ワイドー沖縄』与那覇幹夫(沖縄県)
第16回受賞
小野十三郎賞
詩集『農場』杉谷昭人(宮崎県)
第17回受賞
小野十三郎賞
詩集『ツィゴイネルワイゼンの水邊』平林敏彦(神奈川県)
小野十三郎賞特別賞
詩集『地球にカットバン』宮内憲夫(京都府)
第18回受賞
小野十三郎賞
詩集『九月十九日』 森水陽一郎(千葉県)
小野十三郎賞特別賞
詩集『黎明のバケツ』平野晴子(愛知県)
第19回受賞
小野十三郎賞
詩集『賜物』金田久璋(福井県)
詩評論書『鮎川信夫、橋上の詩学』樋口良澄(神奈川県)
第20回受賞
小野十三郎賞
詩集『結晶体』吉田義昭(東京都)
詩集『シバテンのいた村』西岡寿美子(高知県)
第21回受賞
小野十三郎賞
〈詩集部門〉
『stork mark(ストークマーク)』犬飼愛生(愛知県)
〈詩評論書部門〉
『クリティカル=ライン 詩論・批評・超=批評』添田馨(埼玉県)
第22回受賞
小野十三郎賞
〈詩集部門〉
『悪い兄さん』今野和代(大阪府)
『賑やかな消滅』永澤幸治(富山県)
〈詩評論書部門〉
『終わりなき漱石』神山睦美(埼玉県)
第23回受賞
小野十三郎賞
〈詩集部門〉
『反暴力考』冨岡悦子(東京都)
〈詩評論書部門〉
該当作なし
小野十三郎賞特別賞
〈詩集部門〉
『しのばず』青木由弥子(東京都)
『名づけ得ぬ馬』颯木あやこ(神奈川県)
小野十三郎賞特別奨励賞
〈詩評論書部門〉
『詩人・木下夕爾』九里順子(宮城県)
第24回受賞
小野十三郎賞
〈詩集部門〉
『さざえ尻まで』新井啓子(群馬県)
〈詩評論書部門〉
該当作なし
小野十三郎賞特別奨励賞
〈詩評論書部門〉
『わたしたちのたいせつなあの島へ―菅原克己からの宿題―』宮内喜美子(東京都)
第25回受賞
小野十三郎賞
〈詩集部門〉
『水差しの水』江口節(神戸市)
〈詩評論書部門〉
該当作なし
小野十三郎賞特別奨励賞
〈詩評論書部門〉
『伊東静雄―戦時下の抒情』青木由弥子(東京都)
第26回受賞
小野十三郎賞
〈詩集部門〉
『途中の話』和田まさ子(東京都)
〈詩評論書部門〉
『萩原朔太郎と詩的言語の近代』安智史(愛知県)