文章講座(夜)

担当講師:
葉山 郁生(作家)
半年3回/月曜日開催
18:30〜20:30

プルーストと小説の諸方法 Ⅵ
――眠れる女・その生と死のテーマから永遠なる芸術へ

在校生無料

葉山 郁生(作家)

 テキストは、葉山郁生『プルースト論 その文学を読む』(響文社)。今期は、『失われた時を求めて』第五篇『囚われの女』(ちくま文庫等)。
 本篇は前篇のストーリーの終わりを受けて、同じ年の秋から、パリでの「私」とアルベルチーヌの同棲の日々が描かれていく。第一部は、「私」とアルベルチーヌの同棲生活のある一日が、「代表的一日」の微細な描写を含め、語り始められる(前の期で「朝の音」を取りあげた)。
 本篇「囚われの女」と第六篇「逃げさる女」は、対になっているというべく、元々、アルベルチーヌに代表される現代の人間存在は、十九世紀文学の諸人物の個性や、固定的輪郭を持たない。アルベルチーヌは、「花咲く乙女」から始まって、「ゴモラの女」であり、「水陸両棲」の両性具有的存在である。人間存在は、アルベルチーヌのように移ろうものだから、愛されるものは、愛する人にとり「逃げさる」ものである。だから、その肉体や精神を占有したくて、この主人公のように閉じこめたくなる。しかし、そうすると「囚われの女」は不自由になり、空虚な存在と化し、ついには自身から「逃げさる女」となろう。
 この篇には、アルベルチーヌとの愛の日々が描写されるとともに、主人公、語り手の愛についての省察が、随所に見られる。一例をあげると、「愛とは、その対象である人間が、過去に占めた、そして未来に占めるであろう、空間と時間との、あらゆる点にまでのびた、その人間の拡大のことなのだ」。それは、一つの全きものへの非現実的欲望となる。

スケジュール

5月20日(月)
第五篇『囚われの女』の「ママからの手紙」以前(第一部)

課題=「代表的一日」の黄昏のモチーフ(プルーストと柳田國男の文章提示予定)
7月1日(月)
第五篇『囚われの女』の第二部(ヴェルデュラン家のサロン)

課題=アルベルチーヌの眠りの文体模写・パスティッシュ
8月26日(月)
第五篇『囚われの女』の第三部(同棲の最後の日々)

課題=未定 今期二回目に提示予定

備考
●教材作品はかならず読んでおいてください●課題作(原稿用紙2枚)を、講座日の5日前までに、担当講師宅へ郵送のこと。提出のあった作品をすべてコピーして、皆で読みあいます。
郵送先は事務局 (06-6768-6195) までお問い合わせください。またはお問い合わせフォームよりお問い合わせください。