文章講座(夜)

担当講師:
津木林 洋(作家)
半年3回/月曜日開催
18:30〜20:30

作品の冒頭を考える(Ⅲ)

在校生無料

津木林 洋(作家)

 今回は回想形式の冒頭を考えてみることにいたします。現在から過去を振り返って書く、という形は、現在の目から見て過去を説明できるので、ある意味書きやすい形式だと思います。三人称の視点でも可能ですが、やはり回想は一人称視点がぴったりと来るでしょう。
 過去を語るとき、それが現在の語り手に何らかの影響を与えるように書くべきだと堅苦しく考える必要はありません。過去を語る単なる導入部として使ってもいいのです、過去が生き生きと立ち上がってくれさえすれば。それはどんな形式でも大事なことでしょう。

スケジュール

11月14日(月)
 最初に取り上げるのは村上春樹の『午後の最後の芝生』(『中国行きのスロー・ボート』に収録)です。「僕が芝生を刈っていたのは十八か十九のころだから、もう十四年十五年前のことになる。」で始まり、ある夏の一日の出来事が語られます。なかなか過去に行かないのも面白いですね。村上春樹は回想形式を好んでいるようで、多くの作品にその形式を使っています。

 課題 何らかの出来事を語るための冒頭を書く。
12月12日(月)
 次は夏目漱石の『こころ』です。「私はその人を常に先生と呼んでいた。だから此所でもただ先生と書くだけで本名は打ち明けない。」で始まり、私の慕っていた先生の秘密が語られます。漱石は当時の西洋文学と格闘し、いかに日本の近代文学を確立しようかと様々な形式の作品を書いています。文体にも苦労の跡が見えます。その跡を辿るだけでも、自分の文章の参考になるでしょう。

 課題 ある人を語るための冒頭を書く。
2月6日(月)
 次は瀬戸内晴美(寂聴)の『けだものの匂い』(『妬心』に収録)です。「別れた夫が家を建て、都心のアパートから移り住んだという風の便りは、これまで伝わってきた夫のどの噂よりも私を喜ばせた。」で始まり、自分の来し方を語っていきます。回想して作品を書く場合、過去のある時点を基準にしてそこから時系列で書くのが普通なのですが、この作品では、かつて自分がどんなところに住んでいたかを軸に、思い出すまま書いています。こういう書き方もありですね。

 課題 自分の過去を語るための冒頭を書く。

備考
⦿課題が浮かばない方は、自由に書いていただいても構いません。
⦿課題作は当日、筆者に朗読してもらいます。ペンネーム可。
⦿課題、もしくは自由題のどちらかを本文800字以内で書き、講座のある9日前までに、大阪文学学校事務局(〒542-0012 大阪市中央区谷町7-2-2-305)へ送付してください。