文章講座(夜)

担当講師:
津木林 洋(作家)
半年3回/月曜日開催
18:30〜20:30

作品の冒頭を考える(Ⅱ)

在校生無料

津木林 洋(作家)

 初めて作品を読むときは、まっさらな大地に足を踏み入れる心地がします。その足の方向を決めるのが冒頭だとすると、どんな作家でもそこに力を込めるのは当然でしょう。大上段に振りかぶって書くのもよし、さりげなく日常の延長のように書くのもよし。
 今期は、読者に何があるのだろう、何があったのだろうと思わせる冒頭です。ミステリー小説ではありませんが、小さな謎は読者の足を無理なく前に進めてくれます。

スケジュール

5月16日(月)
 最初に取り上げるのは太宰治の『駈込み訴え』(『走れメロス』に収録)です。「申し上げます。申し上げます。旦那様」から始まって、誰かが誰かに訴えている内容が書かれていきます。
 この作品では話している相手がいるという設定ですが、そうでなくても太宰は誰かに話しているという感じを抱かせるのが上手な作家です。読者の耳元で囁くように書いています。

課題
・誰かに話しているという設定で、しかも相手は登場しないようにして書く。
6月27日(月)
 次は向田邦子の『大根の月』(『思い出トランプ』に収録)です。「あのことがあって、かれこれ一年近くになるというのに、英子は指という字が怖かった。」で始まり、ある出来事が語られます。題名の「大根の月」という言葉は、作者が思いついたのか誰かが言ったのを覚えていたのか、私は後者のような気がします。耳のいい作家でしたから。

課題
・意味深な一行から始まって、それがすぐには明らかにされない冒頭を書く。
9月5日(月)
 次は宇佐見りんの『推し、燃ゆ』。「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。」という出だしです。時系列でいえば、朝目覚めて携帯でSNSを確認してから、冒頭が来るのが普通ですが、それを逆転させることによってインパクトを与えています。朝の目覚めから作品世界に入るという定番を使いながら、眠っている間に事態が急変している切迫感を出しています。

課題
・朝の目覚めを冒頭にして書く。

備考
⦿課題が浮かばない方は、自由に書いていただいても構いません。
⦿課題作は当日、筆者に朗読してもらいます。ペンネーム可。
⦿課題、もしくは自由題のどちらかを本文800字以内で書き、講座のある9日前までに、大阪文学学校事務局(〒542-0012 大阪市中央区谷町7-2-2-305)へ送付してください。