詩入門講座(夜)

担当講師:
冨上 芳秀(詩人)
半年3回/月曜日/教室開催
18:30〜20:30
在校生・修了生・一般とも「作品提出+聴講」は1,000円、「聴講のみ」500円

 

冨上 芳秀(詩人)

 詩が書けるようにする講座である。何を書いたらいいかわからないから書けないという人が多いから、私は、毎回、課題を提示することにした。先ず、その言葉と真剣に対峙する。すると、イメージが湧いてくる。あるいは、様々な感情的反応が生じる。その言葉に対する憎悪、あるいは逆に、愛情、肯定的な感情や否定的な感情が生じるが、そんな言葉を書き連ねればいい。最初は、単に思い浮かぶだけの言葉を書き連ねていくだけでもいい。それを書いていくうちに、書いていく人の深層の心が現れる。それがシュールレアリストが用いたオートマチズムという技法だ。このような訓練を重ねていけば、やがて、難解な現代詩の高度な技術、オートマチズムを使いこなせるようになる。
 この講座には、三つの目標がある。先ず、どんな詩が書かれているのかを広く知ることである。優れた詩を紹介する。その後、現代詩文庫などを読む。三回の講座で三人の詩人を知ることができる。
 詩の技巧には色々あるが、毎回、その一つに焦点を当てる。
 先に述べた課題の詩について批評する。しかし、もっと大切なのは、対話である。講座の中でも、行うが、二次会でも質疑応答を重ねて詩への理解を深めたいと思っている。詩を持ってきて参加することも大切だが、具体的な作品について、私が語ることを聴いているだけでも、効果はないことはない。時々、皆さんに質問したり、作業をしてもらったり楽しい講座にしたいと思っている。

スケジュール

11月18日(月)
【今月の詩人】
谷川雁の詩

【詩の技術】
改行詩に焦点を当てるので、改行詩を書いて提出すること。その作品についての批評をする。改行詩についての説明〈改行の意味。散文脈の改行詩の存在意義と改行のメリット。連の作り方などについて〉参加者による連想ゲーム。プチオートマチズムの練習。ワンフレーズの物語の制作。それらをどう結び付けるか。

【詩のテーマ】
「ふるさと」という言葉によって触発された改行詩を書く。例えば、自分の生まれた都市名、「大阪」等でもいいし、「谷町」とか「御堂筋」とかでもいい。あるいは、「故郷」「古里」でもいい。テーマは望郷の思いでもいい、言葉を解体して「降る砂糖」何ていうのもアリだ。ありがたいアルバイトのアルマイトがあるんだよ。アリが歩いているある日のアリのとわたり。スリリングなあぶない詩が読みたいな。
12月16日(月)
【今月の詩人】
大岡信の詩

【詩の技術】
テーマとタイトル、何をテーマにした詩を書くか。それが最も大切である。しかし、完成して振り返ると最初のタイトルで考えていた内容と詩の世界がズレてきている場合がある。そこで、タイトルを再度考えてテーマに相応しいものにする。タイトルは、けっして作者の個人的なメモではない。読者を挑発し、読みたい気持ちにさせる魅力的なものがベストである。この作品のタイトル、あなたならどう付ける。作者を越えるタイトルは生まれるか。実践バトルが始まるぞ。食うか食われるか。これが詩の入門講座だ。クレイジーな遊びのうちに詩が書けるようになれるんだ。

【詩のテーマ】
男と女。このテーマなら、どんなきらびやかなタイトルと作品世界が生まれるか。所詮この世は男と女の物語。あなたの切ない赤裸々な言葉が、どれほど読者のこころを刺激し、あの時の甘美な地獄に誘い込むことができるか。これぞリアルな美的世界の狂乱の花園になるはずである。
3月3日(月)
【今月の詩人】
岩田宏の詩

【詩の技術】
リフレインは改行詩の一つの有力な武器である。〈「ねむたいか おい ねむたいか/ねむりたいのか たくないか」/ああいやだ おおいやだ/眠りたくても眠れない/眠れなくても眠りたい/ 無理なむすめ むだな麦/こすい心と凍えた恋/四角なしきたり 海のウニ〉ああ、岩田宏だね。そうだよ。詩はなんでもありだ。昔、こんな言葉に引っ掛かって、眠れなくなった経験がある。今も。ぎゃーあ。ウソも百万遍繰り返せば、本当になる。リフレインは、改行詩の有力な武器だ。今度の詩の技巧はリフレイン。深層心理に沁み込んで、死ぬほど四角い資格を持つリフレインの詩を待ってるぜ。

【詩のテーマ】
血のつながり。長い間、忘れていたね。父母の恩。たまには親孝行のつもりで、お父さんやお母さんの詩を書いてみたらどうだい。それだけでも、お父さん、お母さんの供養になる。なに、二人とも、元気だって。そうですか、それは良かった。子供のことを書いてもいいね。家族のこと。これは生活詩の原点だ。孫のことは、書くのが難しい。孫のことを書く様になったら、おしまいだぜ、と冷たく嘲笑っていた私が、山田兼士の孫の詩をほめたことがあった。皮肉ではなく、すなおに孫のことを書く山田兼士を幸せな詩人だと思ったからだ。詩を書いても幸せになる。下手な詩でも、自分がうれしくなる詩ならいいのだ。悲しい不幸な詩を書いても、それによって慰められるのならいいのだ。いい詩も、悪い詩もいっぱい書けばいい。それが生活の詩というものだ。詩は何でもありだ。私は、辛く悲しい詩もたくさん書いている。そのように生きてきたから仕方がない。書かなければいられない詩だったからだ。色々なスタイルの詩を書けばいい。一篇の詩ですべてを語る必要はない。たくさん書くのだ。三回、参加したら詩が三篇書けた。それでいい。それを積み重ねていけばいいのだ。

備考
⦿受講希望者はできるだけ課題に添った詩作品を講座日の9日前までに、大阪文学学校事務局 (〒542-0012 大阪市中央区谷町7-2-2-305)へ郵送または持参してください。作品は各自1篇とします。 タイトルと氏名は3行、本文は37行までとします。散文詩は1行30字詰め(原稿用紙だと貼り合わせればよい)、改行詩は1行最大40字まで。提出作品は全てコピーして講座の時に配布します。