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今春の新入生63名への「ハガキ一枚」課題、今のところ5名から届いています◆作品発表・第1弾【通教部・清野圭一さん<東京都>/昼間部・東加奈子さん<香川県>】

4月25日を皮切りに、春期新入生63名(夜14、昼26、通教23)の皆さんへ、手渡し・郵送・文校ブログを通じて、ハガキ一枚の課題を出しました。
【◎私のふるさと ◎文学学校入学にあたって ◎私を売り込みます ◎私の歩んできた道 ◎私だけのもの ◎最近強く思うこと】という六つのタイトルのうちからひとつを選び、400字~600字ほどで書いて、ハガキかメールで事務局まで届けてください、とお願いしました。
締切は5月31日(土)必着です。提出作品は全て、「文校ニュース」に載せ、文校の多くの皆さんの眼に触れられるようにします。
        *      *
今日までにメールで5名の方から届いているのですが、その中から、清野圭一さん(きよの・けいいち/通教部/53歳)、東加奈子さん(あずま・かなこ/昼間部/62歳)お二人の作品を紹介します。【小原】

        ☆       ☆ 
 私のふるさと  清野圭一(通・詩/エッセイ・冨上C/東京都八王子市) 

 ふるさとという言葉を聞いて、ある種の郷愁を懐かない人は滅多にいない気がします。もちろん、社会の底が抜けたといわれて久しい日本社会ですから、ふるさとなどというものは思い出したくもない、消え去ってしまえという人もいらっしゃるでしょう。現実に東日本大震災時にそのような思いから「ふるさとの復興などやめて欲しい」という発信も散見しました。

 そういうこともありますが、私にとってのふるさとはやはり郷愁に満ちています。現在もこの町から外へ出ないのもそのことに由来すると思うのですが、ある年齢以上のものにとって、やはりふるさとは自身が生まれ育ったという意味も当然ありますが、それ以上にすでに故人となった祖父母や両親の愛してやまなかった土地であるということがとても大きいと思います。

 私は生まれて早々に両親が離婚し、父方の祖父母に育てられましたので、やはりこのふるさとである八王子の地は彼らの思い出と共に私の心に刻印されているのです。そしてたった一人の直系尊属であった父も令和5年に72歳で亡くなりました。父は生まれ育ったこの八王子をこよなく愛した人であったと思います。東京の西の端にあるこの八王子という町は、近年日本遺産にも認定され、その歴史や文化に注目が集まっています。私にも愛郷心というものがありますのでこのことはとても嬉しく、これからも祖父母や父の思い出と共にこの地で生きて行こうと思っています。

        ☆       ☆ 
 文学学校入学にあたって 
 東加奈子(昼・エ/ノンフィクション・谷C/香川県高松市/教室・Zoom併用) 

  「私の初めての選択」     
 将来何になりたいとか、自分に向いている職業とか、真剣に考えずに就職した。六年間働いて、周りが結婚退職しだすと、私も後に続いた。嫁いだ先が自営業で、そのまま四十年余り会社で働いた。決して順風満帆だとは
言い難い年月を経て昨年末、会社をたたんだ。
 お正月、例年なら初荷の準備で三日から工場で準備を始めるところ、今年は炬燵の中で新聞を読んで過ごした。退屈すると近くに住む娘孫の顔を見に行けばいい。
 甘い香りが部屋中に漂う。アッサムをミルクティーにして味わう。新聞をゆっくりと隅まで読んでいると、コラムに市街地ギャオさんが本校のことに触れていた。半年間、小説を書いては応募し、目が覚めれば小説を書いていたとある。私も二十年以上、地元の文学賞に応募し落選し続けている。
 はたと思った。私のこれまでの人生、自ら選択したことがあっただろうか。そんなわだかまりが日々大きくなってきた。私は思い切って本校を訪ねた。入学に当たっての思いを告げると、
「入学したら必ず、賞を取らせてあげますよ」男気溢れる事務局長の声が響いた。
 もしかしたら、私の作品を晴れがましい場所に連れて行ってくれるかもしれない。私の初めての選択。大阪文学学校に入学を決めた。