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第1回 夜・文章講座のご案内。

夜・文章講座
プルーストと小説の諸方法 Ⅳ ――現代の「私」とは何か。さまざまのトポスを考える
講師 葉山郁生(作家)

第1回 5月14日(月)午後6時30分~

◎内容
・テキスト第五章解説
・課題=自分にとり空間・トポスにあたるものを5、6種類、列挙してみる

 空間イメージにあたるものが、次の⑴⑵で、⑶は小説の一節。ビニールハウスの現在と過去が入っています。
 ⑶の例文のように(最終の一文が過去)、⑴や⑵に、私(彼)や他の人の現在と過去のありようを入れた空間イメージを書いて下さい。簡単な5、6文例を。

⑴「ビニールハウス」
 冬夏問わず、家の裏に張られていたビニールハウスは暖房として、サウナとして何時も熱を保っていた。片隅に置かれた机には祖父の使う小さなはさみと、接ぎ木された植物が置かれる。使い古されたビニールには、幾つも穴が開き、時折鳥が迷い込んできては飛び回っていた。

⑵「客間」
 ウチの客間は寝室兼用。普段は蒲団を敷いて寝ている。それも、家族四人川の字で。最近では珍しい形にも思えるが、畳の上に敷く蒲団は格別で、下宿の軋むベッドにこりていた肩も随分とゆるむ。
 だいたい、一六畳ほどのこの空間は私にとって、出会いの場でもあった。初めてCDを聞いたのも、文庫本を手に取ったのも、アイロンをかけたのもココだった。しかし、この客間、お客さんが来ているのを小学校の家庭訪問以来見た記憶がない。

⑶「倒木」
 どさりと地面に落とされたトマトの果実は、皮が破れ目聡い蟻にたかられている。
 暑さのピークを僅かに過ぎた日曜日の午後三時半、興奮した祖父が私を呼びつけたのは畑の外れにあるビニールハウスだった。汚れたビニールで区切られた一〇平方ほどの空間は、立っているだけで汗を滲ませるのに十分な熱を保っていた。
 祖母と私、そして呼び出した祖父が入ればトマトの壁に遮られたハウス内はもういっぱいで、ますます熱が籠もっていくように感じられた。私が子供の頃、祖父はトマト造りに精を出していた。